そもそも残業代って何?
残業代とは、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて労働した場合に発生する割増賃金のことです。
労働者は、本来、決まった労働時間の分だけ働けばよく、それを超えて働く義務はないのですから、本来の労働時間を超えて働いた部分に関しては、その代償としてプレミア付きの賃金を支払わなければならない、ということです。
所定労働時間を超えて労働すれば残業代が発生するの?
それでは、使用者(会社)との間で合意した労働時間(所定労働時間)を超えて働けば、必ず残業代がもらえるのでしょうか?
例えば、会社の就業規則で定められた労働時間(所定労働時間)が1日6時間の場合に、ある労働者が1日7時間働いたとすると、所定労働時間を超えている1時間分については残業代が発生するのでしょうか?
結論を申しますと、このような場合は、原則として残業代は発生しません。
上記の例のように、法定労働時間(1日8時間)は超えないけれど、所定労働時間(上記の例では1日6時間)は超えているという労働を「法内残業」といいます。これに対して、法定労働時間(1日8時間)を超えて労働した場合は「法外残業」と呼ばれます。
そして、残業代というプレミアがつくのは、「法外残業」と「法内残業」の2種類の残業のうち、「法外残業」の方なのです。
そのため、「法内残業」になっている上記の例では残業代は発生しないのが原則です。ただし、「法内残業」であっても、会社の就業規則などで残業代を支給することが定められている場合には、例外的に残業代が発生します。
※ なお、「法内残業」をした場合、残業代はつきませんが、時間賃金に残業時間を乗じた賃金(残業時間分の通常の賃金)は当然請求できます。
※ 変形労働時間制の場合には、所定労働時間を超え、かつ、法定労働時間を超える労働をした時間が「法外残業」となり、その部分に残業代が発生します。
割増率って何?
残業代は、一定の割増率を乗じた割増賃金の形で支払われます。
割増率は、残業の種類によって次のように異なります。
① 法外残業(時間外労働)の場合 25%以上(通常賃金の25%以上)
② 休日労働の場合 35%以上(同上)
③ 深夜労働(午後10時~午前5時) 25%以上(同上)
例えば、法外残業をした場合、その残業時間に対する賃金は、通常の賃金を25%以上割増しして支払わなければならない、ということです。
では、残業の種類が重複する場合(休日に深夜まで労働した場合など)の割増率はどうなるのでしょうか?
この場合は、次のように、各割増率を合算した割増率になります。
① 法外残業+深夜労働 25%+25%=50%以上(通常賃金の50%以上)
② 休日労働+深夜労働 35%+25%=60%以上(同上)
なお、夜勤の仕事など所定労働時間が深夜労働にあたる場合、時間賃金は所定賃金としてすでに支払われていることになるので、残業代としては25%の割増部分のみを請求できることになります(ただし、深夜割増賃金も含めてもともとの所定賃金が定められていることが明らかな場合には、残業代としての25%割増部分の請求もできません)。