残業代請求権は各賃金発生時から2年で消滅時効にかかってしまいます。
例えば、AさんはB社に勤めており、Aさんの給与は毎月末締め翌月15日に支払われます。
Aさんには平成28年2月分(翌3月15日が支払日)から残業代が発生していましたがB社がその支払いをしていなかったため、Aさんが平成31年3月20日にB社に対し残業代請求をしましたというケースを想定します。
その場合、Aさんの残業代のうち、請求時から2年以前に発生していた残業代(具体的には平成29年2月分までの残業代)については、消滅時効にかかってしまっており、B社が消滅時効を援用(消滅時効を使うという意思表示をすること)すれば、平成29年2月分(翌3月15日が支払日)までの未払残業代は請求できないことになります。
期限を延ばすことはできないの?
消滅時効を止めるためには、会社に対して「請求」等をしなければなりません。「請求」というのは裁判や労働審判を起こすことです。
しかし、すぐに裁判等を起こすのは大変であるため、「請求」を行う前提として、「催告」を行えば「催告」後6か月間は消滅時効の完成が猶予されるというルールになっています。
「催告」とは、残業代の支払いを求める意思表示を会社に対して行うことをいい、一般的には、その旨の内容証明郵便等を会社に送付して行うのですが、「催告」後6か月以内に「請求」をすれば、「催告」から「請求」までの間に残業代が消滅時効にかかってしまうということはなくなります(言い換えれば、「催告」の後6か月以内に「請求」をしない場合には「催告」の時効完成猶予の効力は発生しません)。
先程のAさんの例についてみると、Aさんは、平成31年3月20日の時点で催告しておけば、その後6か月以内に裁判(もしくは労働審判)を起こすことで、平成29年3月分(翌4月15日が支払日)以降の残業代について裁判提起までに時効が完成してしまうことを防ぐことができます。