いくつかの場合に分けて回答します。
① 会社が建物を賃貸していた場合
会社の破産管財人は、建物の賃貸借契約を継続するか解除するか選択することができるのが原則です(破産法53条1項)。
しかし、賃借人が建物の引渡しを受けている場合は、破産管財人は賃貸借契約を解除することはできず、賃貸借契約が継続されることになります。
なお、建物に抵当権が設定されている場合、抵当権者は破産手続きに縛られることなく、不動産の競売申立てができます。
そこで、破産管財人は、賃借権の消滅を防ぐため、抵当権者と協議し、建物を第三者に任意売却して、買主に賃貸借契約の賃貸人の地位を承継してもらうこともあります。
② 会社が建物を賃借していた場合
賃借人である会社が破産する場合、会社は、建物賃料の支払いを滞っていることが多いと思います。
そのような状況で、すでに賃貸人から賃料未払いを理由に賃貸借契約を解除され、明け渡しを求められている時は、できる限り速やかに、工場を明け渡さなければなりません。
賃貸人から明け渡しについて何も言われていない場合であっても、会社に対して破産開始決定があると破産管財人が選任され、破産管財人は会社が締結している賃貸借契約を解除するか、それとも継続するかを選択することができます(破産法53条1項)。
通常、破産管財人は賃貸借契約を解除することを選択しますので、会社としては、その時点で速やかに、借りていた建物を明け渡すことになります。
また、破産を申し立てる前に、申立代理人の弁護士の判断で、速やかに賃貸借契約を解除し、明け渡しを完了した状態で破産管財人に引き継ぐこともあります。この場合も、会社が借りていた建物は、速やかに明け渡さなければなりません。
③ 会社が賃借していた建物の敷金・保証金
敷金は賃貸借契約終了後明け渡しまでに生じる賃借人の一切の債務を担保するものですので、敷金を返してもらえるのは、賃借人が明け渡しを完了した時からです。
そのため、会社が破産する場合にも、破産管財人が賃貸借契約の解除を選択し、会社が物件の明け渡しを完了して初めて敷金を返してもらうことができます。
ただし、未払い賃料などがある場合には、差し入れた敷金からその分が差し引かれた金額しか返してもらえないことになります。
なお、保証金の場合にも、基本的には敷金と同様の取り扱いになります。
④ 会社が土地を賃借していた場合
この場合も、会社の破産管財人は土地賃貸借契約を解除するか、そのまま契約を継続するかを選択することができます。
解除を選択すると、建物を収去して土地を明け渡さなければならず、多額の費用が必要になります。
また、借地上の建物には抵当権が設定されていることも多いので、そうした面でも建物の収去は難しく、事実上、解除を選択することは困難です。
また、借地権は第三者に売却できることが多く、売却した場合、破産管財人は売却代金を取得できるので、この意味でも、契約の継続を選択することが多くなります。
このような事情から、破産管財人は契約の継続を選択し、土地賃貸借契約を継続させます。
もちろん、その間は地代を支払わなければなりません。
そして、借地権の価値を適正に評価し、なるべく早期に第三者に買い取ってもらうようにします。
借地権付き建物を譲渡するには、原則として地主さんの承諾が必要ですので(民法612条1項)、地主さんから承諾料を請求されることがあります。
その場合には、承諾料の負担も考慮して買い受けてもらうことになります。
第三者で買受希望者がいない場合には、地主さんと交渉して借地権付き建物を買い取ってもらうこともあります。
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