当事務所が実際に行った事例を3つほどあげてみます。
① 食品販売に携わる会社から受任した後、1ヶ月程度で破産手続きを申立て、約4ヶ月で混乱なく破産手続きが終結した事案
会社の概要
食品加工業界に長年携わった代表者が経営する会社の破産案件でした。食材の仕入れ価格の高騰などのあおりを受け、利益が上がらなかったため、限界を感じ、破産手続を取ることを決意しました。
破産手続とその結末
受任後1カ月程度で裁判所に破産を申立て、直ちに破産管財人に財産を引き継ぎました。比較的小規模の会社であったため、店舗の明渡しと原状回復の問題がありましたが、それ以外に大きな問題はなく、約3か月後の第一回集会期日で、破産手続が終了しました。
本事案に学ぶこと
法人破産における申立代理人としては、財産の散逸を避けなければなりません。無人店舗の場合、荒っぽい債権者であれば、財産になりそうなものを破産手続によらず、勝手に持ち出されてしまうこともありますので、告知書の掲載や、価値のある動産の保管が必要になります。
本事案では、受任前に打合せを多数回重ね、処理方針を決定しておりましたので、無用な混乱はありませんでした。
② 資金繰りが苦しくなっていた会社が、土壌汚染の発覚によって土地を売却することができず、破産を選択した事例
会社破産の原因
機械部品の製造・卸売業を営んでいましたが、景気減速などの影響から資金繰りが厳しくなり、借入金融機関に利息しか返済できなくなりました。
金融機関への返済のため、製造部門を廃止して会社建物の敷地を売却し、卸売業のみに事業を縮小しようとしましたが、土壌汚染が発覚しました。
浄化作業には、4000万円程度の費用を要し、これにより、敷地売却による金融機関への返済計画が頓挫したことが破産の原因になります。
破産申立までに行ったこと
製造の仕掛業務が残っており、事業停止を決断した後にも注文が来ていました。そこで、事業を停止する時期、及び、取引先に代わりの業者を紹介する手続きについて打ち合わせをしました。
また、買掛金債務について、代金未了のまま受け取った商品がないか確認をしました。
裁判所に納める予納金を確保する目的と、債権者への配当にまわす会社の財産を保全する目的のため、会社に残った200万円近い現金、車の鍵などを全て弁護士が預かりました。
破産申立後の流れ
取引先から今後の取引はどこに頼めばよいのか問い合わせがありましたので、事前の打ち合わせ通りに別の業者を紹介しました。
一部の債権者から、倒産が予想できたのに会社が取引を続けたために、代金が回収できなくなったというクレームがありました。
そこで、債権者集会において、土壌汚染が発覚する前には会社の倒産を予測できなかった旨を、会計資料を踏まえて説明した報告書を裁判所に提出しました。
③ 自動車販売に関わる会社の破産を申立て、混乱なく破産処理が実現できた事案
会社の概要
中古自動車の流通業界に長年携わった代表者が経営する会社の破産案件でした。
リーマンショックの頃から徐々に業界全体が不況となり、自動車の登録台数が顕著に減少する中、中古自動車の利幅も落ち、経営を続けることが困難となりました。
借入れを増やして経営を続けることは考えられましたが、抜本的に業態を変えることもできず、限界を感じたため、破産手続に移行することとなりました。
破産手続とその結末
営業を行っていた店舗(借りていた店舗)については、同業者に承継させ、ユーザーとの間で無用な混乱が生じることを避けました。
その結果、破産手続において、残った自動車の換価などを破産管財人に委ねることになりましたが、特別に余計な手間暇をかけさせることなく、破産手続は無事終了しました。
本事案に学ぶこと
法人破産は、初動がとても大切です。Xデー(破産の方針を従業員などに表明する日)前に、従業員や債権者に勘づかれた場合には、無用な混乱を招くことにもなりかねません。
本事案では、破産手続を受任する前に、綿密な打合せを実施し、Xデー以降の段取りを明確にしていたことから、従業員や債権者対応において、特に無用な混乱は起きず、財産の散逸もありませんでした。
また、受任後、1ヶ月以内に申し立てたため、円滑に破産管財人に資料・財産を引き継ぐことができました。
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