前科とは?
よく「犯罪を起こしてしまうと前科がつく」と耳にしますが、前科とは、過去に刑の言い渡しを受けた事実のことをいいます。
前科の種類には、懲役刑、禁錮刑、罰金刑、科料があります。
前科は、検察庁が管理する前科調書と、本籍地の市区町村が管理する犯罪人名簿(交通違反を除く罰金刑以上の刑が確定した者が対象です)に記録されます。
検察官は、刑事処分を決定する際に、参考として前科調書の記載を調べます。
もしその人に前科がある場合には、前科のない人に比べて重い処分が選択されることになります。前科調書に記載された前科は、永久に消えることはありません。
一方、犯罪人名簿は、選挙権の有無や一定の職業に関して資格制限にあたらないかを照会するためのものです。
犯罪人名簿に記載された前科は、刑の言い渡しが効力を失ったとき(懲役刑・禁錮刑はその執行を終えたときから10年、罰金刑の場合は5年が経過したとき)に抹消されます。
前科とよく似た言葉で、「前歴」という言葉もあります。
この「前歴」とは、警察や検察の捜査の対象にはなったものの、微罪処分(警察が犯人を検察官に送致せずに事件を終了させるもので、「警察のお世話になったけれど、厳重注意だけで帰してもらった」ケースなど)や不起訴となった場合のことを指します。
前科がつくことでどんな不利益があるの?
前科がつくと、
①将来別の罪を犯したときに、刑が重くなる可能性がある
②一定の資格や職業につけなくなる
③海外でビザが下りない場合がある
といった不利益があります。
最も大きいのは、①です。犯罪を2度、3度と繰り返している人は、「反省していない」、「懲りずにまた犯罪をしている」と評価されて、前科の全くない初犯の人に比べて、重い刑を科される傾向にある、というのは一般的な感覚からいっても頷けるものだと思います。
②は、懲役刑や禁錮刑を受けると(仮に執行猶予がついた場合でも)、一定期間または無期限で資格や職業につくことができなくなるという不利益です。
警備業者や警備員、建築士、国家公務員、地方公務員、教師、裁判官、検察官、弁護士、司法書士、公認会計士などがあります。
③は、海外で就労ビザを発行してもらう際などに犯罪経歴証明書の提出を求められ、そこで前科があることがわかると、その国の就労ビザがおりないことがある、というものです。
このように、一度ついてしまうと不利益も多い前科。それでは、万一犯罪を起こしてしまったときに、前科がつかないようにするためにはどうすればよいのでしょうか?
前科がつかないようにするための方策
前科とは、過去に刑の言い渡しを受けた事実のことである、と先に説明しました。
つまり、犯罪を起こしてしまったとしても、「刑の言い渡し」を受けないで済めば、前科はつかないことになります。
そこで考えられるのが、次の方法です。
①警察から検察官へ事件を送致させない
②(警察から検察官へ事件送致がなされたとしても)検察官に「不起訴処分」にしてもらう
③裁判で「無罪判決」を勝ち取る
現在の日本の刑事裁判で、有罪判決が言い渡される確率は90%以上とも言われています。
このような状況の中で、③の「無罪判決」を勝ち取るというのは至難の業です。
そこで、現実的な方法として、①または②を目指すべきことになります。
①または②を実現するための具体的な方法は、次のとおりです。
被害者のいる事件で自分の罪を認める場合
この場合は、可及的速やかに被害者との間で示談をまとめることが重要です。
示談がまとまれば、被害者が被害届を取り下げてくれたり、被害回復がなされたこと・被害者の処罰感情がやわらいだことが考慮され、事件が検察官送致されずに終了となる、または検察官が「不起訴処分」にする可能性が高まるからです。
示談にするためには、もちろん被害者に対する相応の金銭賠償が必要ですので、事件を起こした本人やその家族等に、被害弁償のための資力があるかどうかも重要なポイントになってきます。
なお、被害者との間の示談交渉は、弁護士が行うのが効果的です。加害者本人が被害者と話をしようとしても、被害者から接触を拒否されることが多いのですが、窓口が弁護士であれば示談の話に耳を傾けてくれる方もいます。
自分の罪を認めない場合
「自分はそもそもこんな犯罪はしていない」というように事件を否認する場合には、たとえ事件に被害者がいても、示談をするわけにはいきません。
このような場合にすべきなのは、警察や検察官に対して「私は刑事責任を負わない可能性がある」ということを主張・立証することです。検察官が「裁判で有罪判決を得られないかもしれない」と判断すれば、「不起訴処分」になる可能性が高まります。
それでは、どのように「私は刑事責任を負わない可能性がある」ということを主張・立証するかというと、
・事件当日の自分の行動を振り返って、メモに残す
・事件を目撃した関係者がいれば、その人から聞き取りを行う
・目撃者以外に自分と電話・メール等で連絡をとった人がいれば、その人からも聞き取りを行う。また、それらの通信記録からアリバイを立証できないか検討する
・自分の健康状態を立証する(病院で診療記録や診断書を取り付けるなど)
といったことが考えられます。
こうした主張・立証を犯罪の疑いをかけられている本人やその家族、友人などが行うのはやはり限界があります。
専門家である弁護士に依頼し、効果的な主張・立証を行うべきです。
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