1 弁護士に相談をするメリット

(1) はじめに

弁護士に相談をするメリットとしては、①否認をすべきか否か、②黙秘すべきかについて助言を受けられる、③身柄釈放に関する見通しについて説明を受けられる、④刑事責任の重さの見通しについて助言を受けられることが挙げられます。

③については、「逮捕後の流れと手を打つべきポイント」で詳しくご説明をしますので、そちらをご参照ください。

(2) 否認について

ア 否認をすべきか
起訴前の段階でご相談者の方が否認をするか否かを悩んでおられる場合、弁護士は被疑事実を行っていないというご相談者の方の説明をお聞きし、否認をすべきか否かについて助言します。

もっとも、この段階において、検察官が依頼者の方にどのような証拠があるのかを明かしていない限り、弁護士は検察官がどのような証拠を持っているのか分かりません(法律によっても開示を求めることができないからです)。

そのため、弁護士は、ご相談者が世の中に広く知られている常識に照らして不自然な説明をされる場合や、検察官がご相談者の方に開示する証拠の内容に鑑みると罪を争うことが難しい場合でない限り、否認をすることをお勧めします。

(3) 黙秘すべきか

刑事事件の疑いをかけられた人には、答えたくない質問に対しては答えなくても良いという権利があり、答えないことで不利に扱われないという権利(黙秘権)があります。

もっとも、黙秘をしないで、事件に関して具体的な説明をした方が、有利に扱ってもらえる可能性もありますので、ご相談者の方からは黙秘をしないで,捜査機関へ説明をしたいというご相談を受けることがあります。
  
この問題に関しては、黙秘をしないことの不利益として、①供述が変遷するリスク、②取調官によって認識や記憶がゆがめられるリスクがありますので、このリスクを検討したうえで黙秘をすべきか否かを決めた方がよろしいかと考えます。
 
①については、思い違いや記憶の混乱が生じたり、弁解のために記憶と異なる供述をしてしまう等、様々な事情により客観的証拠と矛盾する供述をしてしまい、後に供述を変遷してしまう可能性があります。
 
②については、犯行を決意したのがいつか、どのような動機から犯行を決めたのかを、逮捕直後にははっきりと説明できないことがあり、そのような場合に取り調べに応じることで、もともとの認識や記憶をゆがめられてしまう可能性があります。
  
そのため、黙秘をすべきか否かについて弁護士にご相談を頂いた場合、①や②のようなリスクについて、ご相談者の方の事件において具体的にどのようなリスクがあるのかを説明させて頂きます。そのうえで、黙秘をお勧めさせて頂くことが多いです。
  
そのうえで、罪を争う場合であっても、罪を認める場合であっても、有利な事情を捜査機関へ説明をしておくべきことがあるときにおいては、取り調べで供述をするのではなく、弁護士がご相談者の方の説明を書面に記載して検察官へ送付することをお勧めさせて頂くことがあります。

(4) 刑事責任の重さの見通しについて

刑事責任の重さの見通しについて、弁護士は裁判例に照らして助言をすることができます。

その際の判断の要素は、①罪名、②犯罪行為の具体的内容、③被害の大きさ、④犯罪行為の計画性、⑤犯罪行為の動機、⑥犯行後の被害回復、⑦示談成立の有無、⑦前科の有無及び内容が挙げられます。
   

2、弁護士が示談交渉をするメリット

(1)被害者の方と連絡を取りやすい。

ご相談者の方が、罪を認めて被害者の方に対し示談交渉をご希望する場合であっても、ご相談者の方が被害者の方へ直接連絡を取ることを被害者の方が拒否する場合が多いです。

そのため、弁護士にご依頼を頂ければ、ご相談者の方が弁護士を通じて依頼者の方に連絡を取ることができますので、この点に示談交渉をするために弁護士へ依頼をするメリットがあります。

(2)ご相談者の方が犯行の一部を争う場合に、その否認供述の内容を弁護士が説明し、被害者の方の納得を得ることができる。

事件の内容によっては、ご相談者の方が犯行の一部を否認される場合があり、示談交渉を進めるために、被害者の方にご相談者の否認供述の内容について納得を得なければならない場合があります。

この場合、弁護士にご依頼を頂ければ、ご依頼者の方の否認供述に世の中に広く知られている常識に照らして不自然がないか、又は、ご相談者の行った行動を再現したところ、否認供述に客観的事実と矛盾する点がないかなどの観点から、否認供述の合理性を内容を吟味したうえで、被害者の方にその否認供述を伝え、被害者の方の納得を得ることができる場合があります。

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