交通事故にあったら、加害者や保険会社から損害賠償金(保険金)を請求してもらうことになります。
そこで、「交通事故で損害賠償金を受け取ったら税金はかかるの?」という疑問が生じます。
今回は、交通事故と税金の関係を見ていきます。
1 交通事故の損害賠償金に税金はかかるか?
税金には、よく聞くものとしては、所得税、相続税等があります。
損害賠償金を受けるということなので、所得税に当たらないでしょうか。
答えは、交通事故による損害賠償金については、原則として所得税の対象とはなりません。
国税庁のホームページでも、「交通事故などのために、被害者が次のような治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となります。」と紹介されています(所得税法9条1項17号、所得税施行令30条)。
これは、人身損害(治療費・慰謝料・休業損害等)だけではなく、交通事故による車の修理費や物が壊れた場合の物損費用(修理費・買い替え費用等)についても同様に非課税です。
2 例外
損害を受けた資産が事業用の資産の場合には注意が必要です。
国税庁のホームページでは、「ただし、これらの損害賠償金のうちに、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、その補てんされた金額に相当する部分については、各種所得の収入金額とされます。」と記載されています。具体的には、次の場合です。
⑴ 心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料など
具体的には、事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、それに負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金などです。
ただし、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになります。
しかし、その医療費を補てんし、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。
⑵ 不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金など
具体的には、事故による車両の破損について受ける損害賠償金などです。
しかし、損害を受けた資産が事業用の資産の場合、次のようなケースでは注意が必要です。
①商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について損害賠償金などを受け取ったケース
棚卸資産の損害に対する損害賠償金などは、収入金額に代わる性質を持つものであり、非課税とはならず、事業所得の収入金額となります。
②車両が店舗に飛び込んで損害を受けた場合で、その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として損害賠償金などを受け取ったケース
この損害賠償金などは、必要経費に算入される金額を補てんするためのものであり、非課税とはならず、事業所得の収入金額となります。
③事故により事業用の車両を廃車とする場合で、その車両の損害について損害賠償金などを受け取ったケース
車両の損害に対する損害賠償金などは非課税となります。
ただし、車両について資産損失の金額を計算する場合は、損失額から損害賠償金などによって補てんされる部分の金額を差し引いて計算します。
なお、この場合、損害賠償金などの金額がその損失額を超えたとしても、全額が非課税となります。
⑶ 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金
非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。
また、収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは、非課税所得から除かれます。
(以上、所法9、51、73、所令30、94、所基通9-19、9-23)
3 死亡事故(遺族が加害者から受け取る損害賠償金について)
⑴遺族が受け取る賠償金は、損害賠償請求権を相続したものになるので、相続税がかかるでしょうか?
結論として、交通事故で被害者の方が亡くなられた場合、遺族が加害者から受け取る損害賠償金については相続税の対象とはなりません。(相続税法2条)
⑵ 死亡保険金について
死亡保険金にかかる税金は、その保険の契約形態によって「所得税」、「相続税」、「贈与税」の3種類に分かれます。
税金の種類は、次の関係の組み合わせで決まります。
誰が誰に対して保険をかけたか(契約者、被保険者は誰であるか)
誰が保険料を支払ったか(保険料負担者は誰であるか)
誰が保険金を受け取ったか(保険金受取人は誰であるか)
契約者が保険料を負担するとき、契約者と保険金受取人が同じである場合は所得税が課税され、契約者と被保険者が同じである場合は相続税が課税されます。
被保険者、契約者、保険金受取人がすべて異なる場合は贈与税が課税されます。
この部分は複雑ですので、わからなければ交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
4 まとめ
損害賠償金には原則として税金はかかりません。
ただし例外もありますので、この記事を見て税金がかかりそうだがよくわからないという場合は、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
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