夫婦関係は、お互いの信頼と愛情のもとに成り立つものです。
夫婦の一方、あるいは双方から、その信頼と愛情が失われたとしたら、もはや夫婦としての生活を維持することは苦痛以外の何物でもなくなってしまいます。
そのため、不幸にも夫婦間の信頼と愛情が失われ、もう二度とその関係性を修復できない状態に至った場合には、民法で定めるところの「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものとして、離婚を求めることができるのが原則です。
そうした原則に対して、例外的に離婚を求めることが制限されると言われているのが、有責配偶者、すなわち不倫をしてしまった当の配偶者からの離婚請求です。
不倫をしてしまった有責配偶者からの離婚請求は、本当に認められないのでしょうか
夫婦仲は完全に冷え切っているのに、不倫をしていない配偶者が離婚に同意してくれない以上、いつまでも法律上の夫婦でいなければならないとすると、少し酷なような気もします。
この点、たとえ有責配偶者からの離婚請求であっても、
①別居期間が長期にわたること
②夫婦の間に未成熟子がいないこと
③離婚により他方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれないこと
という3つの要件を満たせば、離婚が認められるとするのが伝統的な裁判所の考え方です。
離婚の原因を作っておきながら自ら離婚を求めるのはいかがなものかという考えもあるでしょうが、上記の裁判所の考え方は、残された他方配偶者や子供の保護を考慮に入れ、有責配偶者と他方配偶者の利益考量のバランスをうまく図ったものということができるでしょう。
別居期間が長期にわたることという要件をクリアするためには、どれくらいの期間の別居が必要なのでしょうか
これまでの裁判例を時代順にざっと見ていきますと、30年→20年超→10年超とだんだん短い期間で長期別居が認められるようになり、約21年の同居期間に対して約6年の別居期間で離婚が認められたケースも出ました(東京高裁平成14年6月26日判決)。
そして、最近では、約7年の同居期間に対して約2年の別居期間で離婚を認めた裁判例も出ています(東京高裁平成26年6月12日判決。しかも、この事案では当時4歳、6歳の未成熟子がいましたが、妻による養育監護がしっかりなされていることを理由に、有責配偶者たる妻からの離婚請求が認められました)。
もちろん、先にご紹介した①~③の要件の総合考慮が必要ですので、単純に別居期間だけを基準にすることはできませんが、比較的短期間の別居であっても、有責配偶者からの離婚請求が認められやすくなっているとは言えると思います。
今後も社会情勢の変化とともに、人々の婚姻や夫婦に関する価値観・考え方が変わってくれば、この分野の裁判所の判断も時代に合わせて変わっていくことが予想されます。
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