退職金は、退職時にもらう金員ですが、その法的な性質は「給与の後払い」的なものと考えられています。
そしてそもそも、夫が仕事をして退職金を含めて給与という労働の対価を得られたのは、妻が配偶者として夫を支えてきたからといえます。
したがって、退職金も給与と同様に財産分与の対象になりえます。
もっとも、離婚時にすでに得られていた退職金が財産分与の対象となるのは当然としても、「将来的に退職金がもらえる」という可能性があるだけでは、分けるべき対象とはいえません。
そこで、将来受給予定の退職金が財産分与の対象とされるかどうかは、実際に退職金が支払われる可能性の有無で判断すべき、ということになります。
実際に退職金が支払われる可能性の有無の判断とは
実際に退職金が支払われる可能性については、下記の①~④の要素を総合して判断することが必要になってきます。
①勤務先の規定(雇用契約書や就業規則上の労働条件)で、退職金が支払われることになっているか
②勤務先の経営状況
③夫の勤務状況
④夫が退職金の受給資格を得るまでの期間
上記のうち、④は、たとえば夫の退職まで長期にわたる場合、その間勤務先が退職金制度を維持しているかや存続しているかが分からないというときには、将来受け取るかどうかわからない退職金の分割を離婚段階で認めてしまうことになるため、不公平であるとして、裁判所も退職金の分割を認めないことが多くなりますし、仮に支払われるとしても、その金額は現在計算できる退職金の満額から算定するのではなく、低額になる傾向があります。
ご質問のケースでは、「52歳の夫が30年勤続している」ということなので、定年を60歳とすると、退職金を得るまでは8年ということになります。
そこで、①の規定があり、②会社が倒産の危機はないということであれば、③30年の勤続ということから今後も定年まで勤務する可能性が高い、という点から退職金受給の可能性がでてきます。
④については、8年後ということですが、過去の裁判例によれば夫の退職が離婚から8年後の事案までは、退職金を財産分与対象財産とすることを認め、一定の給付をなすことを命じています。
もっとも、それらの裁判例では、夫は公務員であったり、勤務先が比較的安定した会社であるため、②や③の要素が退職金の受給可能性に大きく影響していると考えられますので、注意が必要です。
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