固定残業代として支払っていると言われた

このような会社の主張が認められるのは、時間外、深夜労働に対する割増賃金部分と、通常の労働時間に対する賃金部分とが明確に区別できる場合に限られます。

判例においてもそのような判断がなされています。したがって、そのような区別ができない場合には、会社は時間外手当の支払いを免れることはできず、労働者は残業代請求をすることができます。

また、仮に割増賃金部分と通常の賃金部分とが明確に区別できたとしても、現実の時間外労働により算出される割増賃金額が固定残業代の額を超えている場合、労働者は、固定残業代と実際の残業代との差額を請求することができます。

このような請求は多くの裁判例でも認められています。
 

営業手当に残業代が入っていると言われた

このような会社の主張が認められるためには、当該営業手当が時間外労働に対する対価としての実質を有するといえることが必要であり、営業手当の実質が職責や職務の遂行それ自体に対する対価であると判断される場合には、これを時間外手当とすることはできません。

なお、仮に営業手当が時間外労働の対価としての実質を有する場合でも、営業手当の額が、実際の労働時間に応じて算出した時間外手当の額よりも少なくなる場合には、その差額を請求することができます。

管理職だからと言われた

確かに、労基法は、「監督若しくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者」への労働時間規定の適用除外(残業代を支払わなくてもよいということ)を定めています。

しかし、部長・課長などのいわゆる「管理職」がそのまま上記の適用除外者に該当するわけではありません。

行政通達では「一般的には、部長、工場長等、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきもの」として、①職務内容、責任と権限、勤務態様への着目、②地位にふさわしい待遇についての配慮などが指示されています。

判例では、概ね次の3つの要件で判断されています。
① 職務内容、権限および責任の程度
職務内容や職務遂行上、使用者と一体的な地位にあるといえるほどの権限を有し、これに伴う責任を負担していること

② 労働時間の自由裁量性
出退勤についての裁量があり、自ら労働時間の調整ができること)

③ 優遇措置
賃金、賞与等で他の一般社員と比べてその地位にふさわしい処遇があること

以上の基準はかなり厳しいものであり、労基法上の管理監督者にあたらない限り、会社は残業代を支払う必要があります。
なお、裁判例は、以下の者について、管理監督者にあたらないと判断しています。

 ア 一般従業員と同じ賃金体系・時間管理下におかれている名ばかりの「取締役工場長」
 イ 出退勤の自由がなく、部下の人事考課や機密事項に関与していない「銀行の支店長代理」
 ウ 昇進前とほとんど変わらない職務内容・給料・勤務時間の「課長」
 エ 本来の管理職の系列には属さない補佐的な役割の地位にとどまる「業務役」
 オ 建設会社の現場監督
 カ アルバイトの採用、シフト作成の権限を有し、賞与の査定権限があったが、シフト勤務に入る「飲食店店長」

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