残業代計算の基礎となる時間単価はどのように計算するの?
労働契約における賃金形態(月給制、日給制、時間給制など)ごとに「A:通常の労働時間の賃金(算定基礎賃金)」と「B:労働契約上の所定労働時間数」を計算した上で、「A」を「B」で割って、「X:1時間当たりの単価(時間単価)」を計算します。
そして、上記の「B:労働契約上の所定労働時間数」は、月給制を例にした場合、「C:年間の所定労働日数」と「D:1日の所定労働時間数」を掛けた上で、1年の月数である12で割って計算します。
以上をまとめると、
(B:所定労働時間数)=(C:年間の所定労働日数)×(D:1日の所定労働時間数)÷12
(X:時間単価)=(A:算定基礎賃金)÷(B:所定労働時間数)
となります。
これに対し、請負制(歩合制)の賃金の場合は、上記の計算式は当てはまりませんので、賃金算定期間あるいは賃金締切期間において、以下の計算をします。
(X:時間単価)=請負制によって計算された賃金の総額÷総労働時間数
除外できる手当には何があるの?
「A:通常の労働時間の賃金(算定基礎賃金)」には労働基準法施行規則21条において算入しないとされている手当は含まれません(除外賃金)。
除外賃金としては、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 などが挙げられますが、このうち①~⑤については労働とは関係ない労働者の個人的な事情に基づいて支給されているため、算定基礎賃金とすることが適当ではないとされています。
これに対して、⑥、⑦については、除外することに批判もあり、制度趣旨からすれば除外賃金と扱うことには限定的に解釈されるべきともいわれます。
実際に除外賃金に該当するか否かは、厚労省も「名称に関わらず実質によって取り扱うこと」としており、裁判例でも各除外賃金の意義などについて様々な判断がされています。
「家族手当」という名称であっても「独身者に対して支払われている部分及び扶養家族のあるものにして本人に対して支給されている部分は家族手当ではない」として、除外賃金ではないと判断している裁判例もありますので、上記の①~⑦に該当しているからといって、直ちに全てが除外手当に当たるものではない点には注意してください。
労働時間はどのように計算するの?
近年たびたびニュースなどで過労死等の問題が判明していることを受け、厚労省からは、平成29年1月20日付けで「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が発表されています。
このガイドラインによれば、労働時間の適正な把握のため使用者は、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録することと、この確認の方法としては、原則として、①使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること、②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すべきことを示しています。
そして、これまでに出ている多くの裁判例でも、タイムカード等による客観的記録を利用した時間管理がされている場合には、特段の事情がない限り、タイムカード等の打刻時間により、労働時間が認定されています。
ですから、基本的には労働時間はタイムカード等の総労働時間を基準として、そのうち「労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないと評価される時間」を労働時間から除外する、という方法をとります。